足利義持御判御教書のまとめ
まずは写真。
京都府立京都学・歴彩館所蔵「東寺百合文書」ヒ−68号文書の「足利義持御判御教書」です。
室町古文書を代表する文書の形式の第一として私は「御判御教書」を挙げました。「御判御教書」とは、名の通り「御判」つまり室町殿の花押(判)が書かれているものです。「御教書」は本来貴人の意を奉って側近が書く「奉書」の中でも三位以上の偉いさんが出す文書につけられた名前ですが、その辺はおいおい説明していきます。ここでは「偉いさんの文書」ぐらいの意味で使われています。
御判御教書の特徴は次の三つです。
一つは、文書の本文の最後が「之状如件」のように、室町殿の意思が直接表される「直状形式」と言われる形になっていることです。
二つ目は、日付に年号が付されていることです。これは永続的な効力を期待される文書に見られます。ちなみに室町殿の意を直接表す直状形式の文書でも年号が記載されていないタイプを「御内書」と言います。
三つ目は、室町殿の花押が押されていることです。室町殿が直接文書の作成に携わっていることを示し、室町殿の強い意思が表れています。
なお、ここで将軍と言わずにいちいち「室町殿」としているのには理由があって、この応永三十一年という年には足利義持はすでに将軍ではありませんでした。しかし御判御教書など幕府の文書には義持の花押が書かれているわけです。
この時の将軍は足利義量でしたが、彼はまだ見習いで、御内書や御判御教書を出すことはありません。義量は判始の儀式を行う前に死去しているので、そもそも花押は残っておりません。足利義量御内書とか足利義量の花押と記載されているのは、間違いであると断定してよいかと思います。