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室町・戦国時代の歴史・古文書講座

歴史学研究者、古文書講師の秦野裕介がお届けする室町・戦国時代の知識です。

室町幕府奉行人連署奉書の解説6−折紙奉書

では恒例となりました京都府立京都学・歴彩館所蔵『東寺百合文書』ニ−44−6文書です。

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ニ函/44/6/:室町幕府奉行人連署奉書|文書詳細|東寺百合文書

ちなみに今日、ブログの書き方を教えるというオンラインセミナーを見てきました。ベネフィットが必要なようです。考えてみました。このエントリをマスターすると、あなたは、何と!室町幕府奉行人奉書の読み方がわかる!

何か「別に…」(エリカ様風に)という感じがします。実はこの奉行人連署奉書、きちんと数を読んでいると、結構当時の社会の断面が見えて面白いのですが、こういうのはある程度数を読まないと見えてこないのも事実です。室町時代人の考え方や、彼らの収入源などがわかったりします。

 

読み下し文を掲げておきます。

寒河出羽入道常文申す、山城国乙訓郡上久世公文職名田畠の事、先度仰せらるるのところ、無音云々。謂れなし。早く明らめ申すべきの由候なり。よって執達件の如し。

寒河出羽入道や上久世荘については上島有先生の『京郊庄園村落の研究』(塙書房、1970年)に詳しいです。

 

上久世荘は現在のイオンモール桂川自衛隊桂川駐屯地およびその東側の新幹線を挟んだ地域です。

 

寒河出羽入道は、東寺側の公文職を狙った細川京兆家の被官です。公文職の名田畠の知行をめぐって寒河常文が東寺サイドの公文であった真板氏を排除しようとして幕府に訴え出て、それが認められたのですが、東寺および真板氏はそれに抵抗していた、という図式です。「無音」というのは幕府の判決をガン無視していることを示します。

 

これ、実は少なくとも数年レベルで争っていて、幕府は何度も東寺に文書の提出を求めています。しかし東寺はガン無視を続けていたようで、「無音」という言葉が何度も出てきます。

 

訳を示しておきます。

寒河出羽入道常文が申している山城国乙訓郡上久世公文職(くもんしき=荘園の現地の下級管理者)の名田畠のことについて、ずっと仰せられているところ、何も言って来ない。正当性がない。早く弁明すべきである、ということである。よって以上のように伝える。 

 

例えば、私たちが桂川イオンに行ったり、阪急に乗って洛西口駅を通りかかったり、JR西日本東海道本線に乗って桂川駅にさしかかったり、新幹線に乗って桂川付近を通る時、そこの上久世荘の話を思い出していただければ、いろいろと思うところがあるのではないでしょうか。(ベネフィット)