天皇、綸旨を取り消されたってよ4
綸旨を取り消されるということはよくあるのでしょうか。不勉強なんでその辺はわかりませんが、御成敗式目にも「掠め給わる」という言葉が出てきますので、昔からお上を騙して不正に補助金やらを「掠め給わる」悪党はいたんでしょう。この場合補助金を出したお上の責任ではなく、騙した方がなんらかの罪科に問われるようです。御成敗式目43条では所領没収、所領なければ遠流と決められています。
綸旨ではどの程度天皇の意思が反映するのでしょうか。
嘉吉の乱で後花園天皇が出した赤松満祐治罰綸旨の発給過程を見てみましょう。
細川持之が「持之?m9(^Д^)プギャー」状態になったため、天皇の綸旨にすがることに決定。
三条実雅(義教の義兄、嘉吉の乱で怪我)に綸旨を出してくれるように頼む。
実雅から中山定親(朝廷サイドの幕府担当窓口)に伝達。
定親から天皇の祐筆の坊城俊秀に指示。
俊秀が万里小路時房に下書きを依頼。時房は日が悪いということを理由にばっくれようとするも俊秀の粘りに負けて「清原業忠に添削してもろてや」と渡す。
業忠、ゲロと下痢ピーを理由に拒否するも俊秀、裏口から襲撃して添削成功。
俊秀、後花園天皇のもとに苦労してゲットした下書きを提示。
後花園「ふーん、まあええんちゃうの?でもちょっと書き足しとくね」と言ってほぼ全ての文言をチェンジ。俊秀の苦労は何だったんだろう、と思うのは俊秀と私だけでしょうか。
西園寺公名、天皇がほとんど自分で書いたと聞いて「そんな話聞いた事ねぇわ」と激おこぷんぷん。
というような過程を経ているので、後花園天皇が手を入れなければ、まあ普通の綸旨発給手続きになりそうです。ということは、天皇は本来上がってきた綸旨の下書きにOKを出すのが仕事のようです。
ということは、出した綸旨の根底が間違っていて、その結果綸旨が取り消されたとしても「そいつが嘘ついとったん、知らんかっとってんちんとんしゃん」と言ってごまかせるレベルではないかと思います。
では後花園天皇の反応を示す史料をみてみましょう。
女房奉書というのは、天皇に使える女房が、天皇の意を奉じて出す文書です。それだけに天皇の意がダイレクトに出ます。この「後花園天皇女房奉書案」は案文なので、女房奉書独特の散らし書きではないため、読みやすくなってます。あくまでも比較的、のレベルではありますが。
長くなってきましたので、これの解説などは次回に続きます。