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室町・戦国時代の歴史・古文書講座

歴史学研究者、古文書講師の秦野裕介がお届けする室町・戦国時代の知識です。

後花園天皇宸翰消息と足利義教自筆御内書

熱田神宮所蔵の後花園天皇宸翰消息と足利義教自筆御内書を見に行ってきました!

 

その感想について述べてみます!

 

現物の写真は下記のサイトで見ることができます。

www.atsutajingu.or.jp

まずは後花園天皇宸翰消息から見ていきます。画像はリンク先をご覧ください。

 

その上でその画像先を翻刻したものが下の画像になります。字が汚いのはご容赦ください。

f:id:ikimonobunka:20190129174920j:plain

 

熱田神宮の画像と並べてみていただくとわかりやすいのですが、目を引くのが「熱田社」の「熱」の下の部分が「火」になっていることです。

あとひらがなにいくつか異体字が使われています。例えば②のすぐ下の「ねんころに」の部分の「ね」が漢字の「袮」をほぼ崩さずに書いたものがあります。それでもこれはひらがなの「ね」です。そもそも「ね」の字母は「袮」です。

同様に②の最後の「に」も「尓」を字母とした異体字なので、それを押さえる必要があります。

 

③の3行目の「めてた」の「た」も読みにくいですが、「多」を字母とする異体字です。

 

またこの消息ですが、「宸翰女房奉書」という言い方が使われるように、女房奉書の形式になっており、女筆(にょひつ)が使われています。

③の1行目はこのぐにゃぐにゃで「まいらせ候」と読むのは覚えるしかありません。

①の最後の「御知行」の下のくねくねも「候へく候」と覚えるしかありません。

 

次に足利義教自筆御内書をみていきます。

同じく画像はリンク先をご覧ください。

釈文は以下の通りになります。

尾張国熱田社領

可有御管領之由被進

勅書候。目出候也。誠恐

謹言

 十二月十二日 (花押)

人々御中

 1行目の「熱田社」の「熱」の字が上と同じく「火」になっています。

2行目の二字めの「有」は典型的な読みです。「管」の下の「官」の形が「友」みたいになっていますが、そこはそういうものです。

 

いずれも宛先は伏見宮貞成親王です。

 

貞成親王宛の文書が二通、ここにある理由ですが、一般的には文書はその権益を持つものが保持するのが普通です。したがって宛先と文書の所在は一致しないことも多いです。

 

この場合、宛先が貞成親王で、要件はざっくり言えば熱田社領天皇家領から伏見宮家領とする、という内容です。この文書によって権益を得るのは貞成親王なので伏見宮家に伝来していても不思議ではない文書ですが、熱田社にあります。理由はわかりませんが、想像すると、熱田社領の本所職が天皇家から伏見宮家に移ることに何らかの差し支えがあった可能性があります。

 

いかがでしたか?

 

結局、この文書が熱田社に伝来した理由はわかりませんでした。

 

しかし、この文書を今回の展覧会で多くの方がご覧になって感動したことは間違いなさそうです。

 

お読みいただきありがとうございました!

 

(注)この書き方は元ネタあり。