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室町・戦国時代の歴史・古文書講座

歴史学研究者、古文書講師の秦野裕介がお届けする室町・戦国時代の知識です。

オンライン歴史講座応仁の乱3

題名が定まらなくて申し訳ねえっす。

 

ticket.asanojinnya.com

これの予告です。

 

応仁の乱を取り上げているわけですが、今回は「戦国時代っていつ始まったんだ?」という問題を取り上げたいと思います。

 

まあ私は塾で小学生を教えたりしている関係上、応仁の乱について触れることがあるわけですが、中学入試対応で応仁の乱を取り扱う場合には「日野富子が悪くて将軍の後継争いが起こって応仁の乱になった」とか「細川勝元山名宗全の対立ガー」とか嘘ばっかり教えたりしていますが、受験対応は「正しいこと」ではなく「受験に出ること」を教えることが必要です。

 

それはさておき、受験では応仁の乱が終わった結果、戦国時代に入った、と教えます。一方東軍が事実上勝った、ということは教えません。試験に出ませんから。

 

ちなみにどうでもいいことかもしれませんが、試験に出るかどうかの判定をどうするか、といえば自分が担当している地域の中学校の過去問を10年分やります。すると大体何が出て何が出ないのかはわかります。塾講師のバイトを考えている学生さんへのアドバイスです。

 

で、今日のテーマにようやく入りますが、「戦国時代にいつ突入するのか」という問題です。これについては私はぐにゃぐにゃの答えしかないので明日の討論次第でどう転ぶかわかりません。結末は自分でもわからないので見てください、としか。コメンテーターである兵庫大学教授の金子哲先生がどのようにお考えで、どのように私の議論に絡んでくるか、読めないので、明日が楽しみです。私は金子先生の仰せの通り、という対応をすることだけは火を見るより明らかです。

 

戦国時代はいつ始まったか、といえば、ここが中学受験を目指す塾の社会の授業の時間であれば「応仁の乱の結果、室町幕府は崩壊し、戦国時代になった。覚えておくように」と偉そうに言います。

 

しかし今谷明先生は明応の政変によって戦国時代に入った、とおっしゃいます。


戦国期の室町幕府 (講談社学術文庫)

 

「えっ!?明応の政変って?」

 

細川政元が将軍足利義材を引き摺り下ろし、新たに足利義晴を将軍に据えた事件です。これで将軍は傀儡化し、細川京兆家専制的な権力を振るう京兆専制政治が成立し、畿内を制圧しますが、逃亡した足利義材改め足利義稙大内義興を頼り、公方が二つに分裂し、日本は戦国時代に入る、という考え方です。

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足利義稙



ところが、京兆専制政治論にも疑問が出されています。

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足利義晴

足利義晴の時期には内談衆や奉公衆、奉行人など幕府独自の機構が整えられた、とされています。したがって細川政元によって京兆専制政治が成立した、とは言い切れない、という考え方です。

 

さらに室町時代の大名(たいめい)の存在形態が明らかになってきています。大名と呼ばれていたのは守護の中でも幕政に関与する畿内近国の守護たちで、彼らは複数の守護職を兼帯し、在京して幕政に参加することが義務でした。国許に下向するのは幕府に反抗する時か、幕府に恭順の意を示すために謹慎する時かのどちらかでした。具体的には畠山家、畠山匠作家(能登守護家)、細川京兆家、細川讃州家(阿波守護家)、斯波武衛家、大野斯波家、一色家、山名家、京極家、赤松家、土岐家、世保(よやす)家、武田家あたりです。

 

しかし応仁の乱で彼らのほとんどは領国に帰らざるを得なくなります。これで困るのは例えば斯波武衛家の場合どこに帰るのか、ということです。斯波武衛家は越前・尾張遠江の三ヶ国に守護職を持っていましたが、体は一つです。どこか一つに絞らざるを得ません。斯波武衛家は尾張国を選び、越前は朝倉、遠江は今川のものになります。今川家は遠江守護代の甲斐氏が京都とのつながりが深く、在地には根ざしていないことをいいことに遠江を強奪します。

 

こうして彼らは国許に下国するわけですが、細川家のみは丹波・摂津など京都の近くに守護職を持っていた関係で京都に勢力を及ぼします。

 

こういう形が戦国時代であって、したがって大名の在京原則が崩壊した応仁の乱が戦国時代だろう、という意見が現在では出ています。

 

どちらに与するべきか。私は明日とりあえず決定します。あくまでも当座の決定ですので翌日には転向しているかもしれません。

 

では、明日の8時半からをお楽しみに!

 


マンガ 日本の歴史〈22〉王法・仏法の破滅―応仁の乱 (中公文庫)

 

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