足利義詮御判御教書(『朽木家古文書』、国立公文書館)
古文書入門です。国立公文書館所蔵の「朽木家古文書」の写真版を教材に古文書の読み方を勉強しています。
本日は足利義詮御判御教書です。
では早速釈文と読み下しから行きましょう。
ますは釈文。
近江国朽木庄以下〈載曽祖父譲状〉
事、任去文和三年閏十月四日亡
父〈経氏〉譲状之旨、領知不可有相
違之状如件
貞治貮年六月三日 花押
佐々木出羽五郎殿
次は読み下し。
近江国朽木庄以下〈曽祖父の譲状に載す〉の事、去る文和三年閏十月四日の亡父の譲状の旨に任せ、領知相違あるべからずの条、件の如し。
貞治二年六月三日
佐々木出羽五郎殿
御判御教書です。御教書といえば本来は奉書形式ですが、御判御教書はこのように直状形式です。
日下(にっか)と言って日付の下に花押が捺されているのは、かなり厚礼の形式です。佐藤進一氏の『古文書入門』ではA〜Eに分類され、Aが一番厚礼で、どんどん薄礼になっていくと説明されています。
一番厚礼なタイプではこのように日付の下に花押があり、宛名が独立して書かれています。最後の「佐々木出羽五郎殿」です。
Bでは宛名は同じですが、花押の位置が袖(文書の右端)に書かれます。
あとは宛名が本文の中に取り込まれたものです。
ここにその例が挙げられています。
ここでは「寺家領掌相違あるべからず」とありますので、「寺家」の権益を保証した「寺家」宛の文書であることがわかりますが、最後の宛名はありません。