記載されている会社名・製品名・システム名などは、各社の商標、または登録商標です。 Copyright © 2010-2018 SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved.

室町・戦国時代の歴史・古文書講座

歴史学研究者、古文書講師の秦野裕介がお届けする室町・戦国時代の知識です。

足利義詮御判御教書(『朽木家古文書』、国立公文書館)

古文書入門です。国立公文書館所蔵の「朽木家古文書」の写真版を教材に古文書の読み方を勉強しています。

 

www.digital.archives.go.jp

 

本日は足利義詮御判御教書です。

 

f:id:ikimonobunka:20190408184851j:plain

足利義詮御判御教書 国立公文書館

では早速釈文と読み下しから行きましょう。

ますは釈文。

近江国朽木庄以下〈載曽祖父譲状〉

事、任去文和三年閏十月四日亡

父〈経氏〉譲状之旨、領知不可有相

違之状如件

貞治貮年六月三日   花押

佐々木出羽五郎殿

 次は読み下し。

近江国朽木庄以下〈曽祖父の譲状に載す〉の事、去る文和三年閏十月四日の亡父の譲状の旨に任せ、領知相違あるべからずの条、件の如し。

貞治二年六月三日

佐々木出羽五郎殿

 御判御教書です。御教書といえば本来は奉書形式ですが、御判御教書はこのように直状形式です。

日下(にっか)と言って日付の下に花押が捺されているのは、かなり厚礼の形式です。佐藤進一氏の『古文書入門』ではA〜Eに分類され、Aが一番厚礼で、どんどん薄礼になっていくと説明されています。

 


古文書学入門

 

 

一番厚礼なタイプではこのように日付の下に花押があり、宛名が独立して書かれています。最後の「佐々木出羽五郎殿」です。

 

Bでは宛名は同じですが、花押の位置が袖(文書の右端)に書かれます。

 

あとは宛名が本文の中に取り込まれたものです。

 

ここにその例が挙げられています。

sengokukomonjo.hatenablog.com

f:id:ikimonobunka:20180213140050j:plain

足利義持御判御教書 京都府立京都歴彩館所蔵

ここでは「寺家領掌相違あるべからず」とありますので、「寺家」の権益を保証した「寺家」宛の文書であることがわかりますが、最後の宛名はありません。