近江守護家年寄連署奉書案(『朽木家古文書』179 国立公文書館)
古文書入門です。
朽木家古文書から「近江守護家年寄連署奉書案」を見てみます。
まずは現物から。
長いですが、とりあえずダウンロードしてご覧になることをお勧めします。
まずは翻刻から。
一番端っこの付箋部分から見てみます。
田中之山へか(可)やか(可)りいれ(禮)
られ(禮)候て大くわ(王)そに(尓)なり候て
おや方さま(万)へむかいに出られ候
御申候て田中四郎兵衛一は(者)んか(可)り(理)之時御やか(可)た(多)
の文田四への御下地なり天分十二年に(尓)
これは仮名交じりで、しかも変体仮名が多いので難しいです。
漢字交じりで書いてみます。
田中の山へ萱刈り入れられ候て、大過そになり候て、おや方(御屋形)様へ向かいに出られ候御申し候て、田中四郎兵衛、一番刈りの時、御屋形の文、田四(田中四郎兵衛)への御下知なり、天文十二年に
となります。『史料纂集』の読みに従っています。ただ「大くわそ」のところ(大過處カ)となっていますので、この辺はそのままにしました。
本文です。
朽木殿領中山木盗捕
之輩、今度被對御同名
中被成御下知、堅被相
觸之処、御領内之輩号
萱苅至山中押入、即
以奉書之旨被追拂、一人
被搦置之処、為相當朽木
商買人被召篭云々、
無是非次第也、雑(贓)物并
伐物以下被返付、種々
御申条、只今事者被落
居訖、於向後朽木殿無
合点萱苅於被入者、為御
違背条、一段可被成其
御心得間、可有御存知由、被
仰出候也、仍執達如件
天文拾貳年十月十六日
忠行
高雄
田中四郎左衛門尉殿 雑掌
読み下します。
朽木殿領の中山の木を盗み捕るの輩、今度御同名中に対せられ御下知を成され、堅く相触れらるの処、御領内の輩、萱苅と号し、山中に至り押し入る、即ち奉書の旨を以って追い払われ、一人搦め置かるるの処、相当として朽木商買人召し篭めらるると云々、是非無き次第なり、雑(贓)物並びに伐物以下返付せられ、種々の御申し条、只今の事は落居せられおわんぬ、向後において朽木殿の合点無く萱苅に入らるにおいては、御違背たるの条、一段其の御心得なすべきの間、御存知あるべきの由、仰せ出だされ候なり、仍て執達件の如し
「贓物」というのは盗品のことです。「相当」というのは、朽木氏が捕縛した田中四郎左衛門の領民の身代として朽木氏の商売人を報復として拉致した、ということです。結局手打ちがなされ、朽木氏の許可なく朽木氏の領内で萱刈りをしてはいけない、ということです。
かなり長いので今回はこれで。