室町古文書を実物を見ながら読んでみる
では前回の続きです。「東寺百合文書」ヒ−68号文書、足利義持御判御教書(京都府立京都学・歴彩館所蔵)です。
実は文字自体はそれほど崩れてません。そういうのを選びました(笑)。
実はこの文書に釈文(しゃくもん)が付いています。
ここにアクセスして、右上に「テキスト」と書かれた青いボタンがありますが、そこを押すと画面が次のように変わります。
東寺領山城国植松東庄地頭職事、
最福寺雑掌雖歎申、可付替地之
上者、止彼競望、任当知行之旨、寺家
領掌不可有相違之状如件、
応永三十一年三月十二日
勝定院殿
菩薩戒弟子(花押)
(足利義持)
簡単ですね。これで何も言わなくても意味が分かることでしょう。
一行目の「國」は「国」の旧字だとか、二行目の一番上の宀に取は「最」の異体字とか、その辺は以下のところが詳しいので、そこで勉強しましょう。
漢字は全部読めましたね。簡単でしょう?
とはいきませんね。
漢字ばっかりで、
という感じになりませんか?
これは当時の公文書が基本的には「変体漢文」(へんたいかんぶん)で書かれているからです。変体漢文というのは日本の昔の人が日本語を記録するために中国風に書いたものです。だから高校時代の漢文の知識があれば、多分読めます。
一応訓読文を作っておきます。詳しい解説は次回。
東寺領、山城国、植松東庄の地頭職(じとうしき)の事
最福寺雑掌嘆き申すといえども、替地に付くべきの
上は、彼の競望(けいぼう)を止め、当知行の旨に任せて寺家
領掌相違あるべからずの状、件(くだん)の如し
応永三十一年三月十二日
勝定院殿
菩薩戒弟子(花押)
この変体漢文を読む必要性、あるいは読みの難しさ、「当知行」のような語義などが近世に比べて難しいところが、室町・戦国古文書を難しいものにしています。その辺のことをまた述べたいと思います。