ベストセラーを狙うには
『「本を出版したい」あなたへ贈る、ナイショの知恵袋』という本があります。
「本を出版したい!」あなたへ贈る、ナイショの知恵袋(アンチョコ): 普通の会社員の私が、なぜ、1年間に5冊を出版できたのか?
ここの中で非常に印象に残ったのが「絶対に売れるテッパン企画」です。
1 ダイエット
2 お金儲け
3 不安を取り除く
これに加えて「対人コミュニケーション」を西沢氏は加えています。
私の場合ダイエット本は期待できません。デブだからです。大学で「歴史観の形成」という講義を終えた後にやってきた学生が「先生は『現代とヘルスケア』の先生ですか」と質問にきたので、思わず「私がヘルスケアについて何か言及する権利があるように見えますか」と答えたくなりましたが、アカハラと思われても困るので「いえ、違います。次の先生がそうです」と返しておきました。
お金儲けももちろん期待できません。
でも大丈夫だそうです。西沢氏は「あなたの『得意ネタ』を強引に4大テーマと結びつけてしまうという裏技があります」といいます。
なるほど、室町時代の話を4大テーマに結びつけるのか。
やってみましょう。
「足利義持に学ぶダイエット」
うん、期待できそうにありません。「まず義持がダイエットしろよ」と言われそうです。
「あなたも健康に!足利義持に学ぶお風呂の入り方」
「義持様はお尻にできものができた。今日お風呂で掻き破られたのでお傷があった、ということだ。大したことはない」(『満済准后日記』応永三十五年正月七日)
「御前に参ったところ、ものすごく消耗していらっしゃって魂消た。おっしゃるには『四十三歳で死んだとしても思い残すことはない。」(『満済准后日記』同月十六日)
「今日の午前十時ごろお亡くなりになった。籤を開けたところ義円様だった」(『満済准后日記』同月十八日)
うん、死んじゃいましたね、義持さん。
次。
「ビジネスの達人楠葉西忍に学ぶ!これであなたも転売でもうける!」
「中でも明に持っていくものは例えば百貫であれば十種類くらいのものを持っていくべきです。その時その時で売れ筋は変わるからです。あるものは十倍、二十倍の利益を叩き出します。あるものは全く売れないこともあります。ここ重要!!」(『大乗院寺社雑事記』文明十五年正月二十四日)
うーん、ものすごくよくわかりますね。これを守ればあなたもお金儲けし放題です。要するに楠葉西忍はリスクヘッジをしろ、と言っているんですね。
なんだか自分で言っていて胡散臭さが満点です。というか、自分で自分の言っていることがわかりません。なんだよ、リスクヘッジって。意味知って使っているんかよ。意味も知らないのに、適当に横文字並べたら格好いいと思って言ってます。
ちなみに楠葉西忍のこの言葉については私の「中世ラッコ関係史料の基礎的考察」で取り上げています。『十六世紀論叢』第十号です。残り8冊だそうです。なくなる前にお買い求めください。
次。
不安を取り除く。
不安とは「健康」や「老後」などへの不安。「〇〇で健康に」「ボケないための〇〇」とかだそうです。場合によっては終活もこれに入ってきそうですね。
そこで「これで安心!後小松天皇に学ぶ遺言の仕方」
彼の遺言は三つでした。
「貞成親王に太上天皇号を奉ってはいけない」「貞成親王を仙洞御所に住まわせてはいけない」「追号は小松院に」(『建内記』文安四年三月二十三日)
最後のは「後小松院」となり、辛うじて守られましたが、二つ目は義教によって反故にされ、一番初めのものも貞成親王の執拗な運動の末に後花園天皇もついに貞成親王への太上天皇号奉呈に踏み切ります。
ダメじゃん。
そこで気を取り直して「もうこれで大丈夫!足利義満に学ぶ相続」
本人は急死したので後継者を指名できず、斯波義将の意見で足利義持に決まり、義満が可愛がっていた足利義嗣は粛清されました・・・。
あかん・・・
気を取り直して次。
対人コミュニケーションにいきましょう。
「これで部下とのコミュニケーションは万全!足利義教に学ぶマネジメント」
部下に対して厳しく接し、あくまでも威厳を持って部下を強く押さえつけましょう。すると・・・殺されてしまったではないですか。
「赤松満祐を討つ企てがバレて反撃された。自業自得の結末、仕方がないことである。将軍のこのような犬死は、今まで聞いたこともない」(『看聞日記』嘉吉元年六月二十五日)
ダメだ、こりゃ。
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