織田信長朱印状を読む
今回は朱印状を読んでいきます。まずは現物を。国立公文書館蔵『朽木家古文書』三十八号文書「織田信長朱印状」です。
織田信長は人気がありますね。娘の保育園のお友達のお母様に中世史に関心がある方がいらっしゃって、「織田信長が好きです」とおっしゃっていたのですが、人気があります。私の父親がやはり大好きで、私の名前の一番下の文字が「織田上総介信長」の「介」から採用しているのは、自分にとってはとんでもない黒歴史です。ちなみに上の文字は石原裕次郎だそうです。
これは有名なネタになりつつあるんですが、「織田信長の革新思想に学ぶ」とかいうのは端的に言って虚偽だそうです。織田信長は実は非常にマイルドで保守的で権威主義的で宗教も重んじた現実的で有能な政治家であると評価され始めています現物を見ておきましょう。
では翻刻から。
今度使者被差
越内存之通承
届候別而忠節之
至祝着候須戸庄
請米之事如前々
可申談候并新知
方之儀磯埜ニ申
含候不可有相違
状如件
元亀貳
七月五日 信長(朱印)
朽木弥五郎殿
一行目の「被」は大幅に崩れていまして、「山」に見える方もいらっしゃると思いますが、割合よくみかけるので覚えましょう。
二行目の「内存」ですが、「内存」という言葉を知らなければ、「「内存」に見えるんやけどな〜」と悩むことになります。まずは辞書を引きましょう。ただし手元にある「三省堂国語辞典阪神タイガース仕様」にはこの言葉はありません。「小学館日本国語大辞典 精選版」にはあります。辞書はいくつか持っておかれることをお勧めします。
六行目の「新知」は「新しい知人」という説明が「日本国語大辞典」にありますが、ここでは「新しい知行地」ということです。
七行目の磯埜は磯野員昌のことです。異体字です。異体字を知らないと「磯野」と読めないと思います。あと、翻刻するときには異体字は通用字体に変えられるので、「なんでこれが「野」なんやろな〜」と悩むことになります。
八行目の「相違」も後ろの「違」が「麦」に「しんにょう」の異体字です。
異体字についてはここのサイトが詳しいのでぜひご参考になさって下さい。
読み下しと解釈は次回に。