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室町・戦国時代の歴史・古文書講座

歴史学研究者、古文書講師の秦野裕介がお届けする室町・戦国時代の知識です。

拙著『乱世の天皇』見どころ14ー評伝だけではない

引き続き今谷明氏にいただいた拙著へのレビューを取り上げます。

 

weekly-economist.mainichi.jp

冒頭に書いてあります「評伝の形式取りつつ室町期の特異な状況活写」ですが、要は後花園天皇の評伝というに止まらず、室町時代の朝廷と幕府の関係を描き出した、ということです。

 

これは裏があります。

 

私は自分の推しである後花園天皇について広めたい、というノリしかありません。

 

「あとがき」に拙著の刊行事情が書いてありますが、最初にお話を持ってきてくださった渡邊大門氏からは「単なる評伝ではダメ」(意訳)というアドバイスをいただいています。もうここから「評伝の形式を取りつつ室町期の特異な状況活写」という拙著の方向性は決まっていました。

 

さらに最初に担当いただいた藤原清貴氏からは「室町幕府と朝廷の特異な関係をしっかり描いて欲しい」(意訳)という注文が入りました。

 

さらにさらに最終的に担当いただいた小代渉氏からは「後花園天皇だけではなく、北朝天皇を描いて欲しい」(意訳)という注文をいただきました。

 

その結果、「評伝の形式を取りつつ室町期の特異な状況活写」という拙著の売りが作り出されたわけです。

 

著書の出版というのは著者だけではなく、多くの人々との共同作業なのだということを強く感じます。

 

もう一つ、この話から私が学んだことは、マーケティングでもよく出てくる「自分の売りたいものではなく、お客様の欲しいものを」というネタです。拙著に引きつけるならば、「自分の書きたいものではなく、読者様の読みたいものを」ということです。