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室町・戦国時代の歴史・古文書講座

歴史学研究者、古文書講師の秦野裕介がお届けする室町・戦国時代の知識です。

伊勢盛時(北条早雲)初出文書ーゆうきまさみ氏『新九郎、奔る!』を解説する

北条早雲こと伊勢新九郎盛時の初出文書です。

井原市の文化財・偉人・伝統芸能・昔ばなし

 

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平盛時禁制(岡山県井原市法泉寺蔵)Copyright2017 Ibara City Office. All rights reserved.

 

この文書は『新九郎、奔る!』第6巻40ページに出てきます。翻刻(くずし字を活字にすること)は同書39ページにあります。

 


新九郎、奔る!(6) (ビッグコミックス)

 


新九郎、奔る!(6) (ビッグ コミックス) [ ゆうき まさみ ]

 

おそらくこの文書は昔から知られていたようですが、北条早雲の実名(じつみょう)は「長氏」と言われていたため、この「平盛時」が備中伊勢氏の関係者であることは分かっていてもなかなかそれが北条早雲とは思われなかった、というのがあると思います。

 

花押がいわゆる「足利様」であることが目を引きます。後年の伊勢宗瑞時代の花押は全く違う形です。これは彼が幕府奉公衆ではなくなったことと関係があるかもしれません。

 

一応翻刻と現代語訳は上記『新九郎、奔る!』にありますので、こちらでは読み下しをつけておきます。

 

禁制 長谷法泉寺

一 甲乙人等乱入狼藉の事

一 山中の榜示の内の竹木を切る事

一 寺辺において殺生を致す事

右の条々堅く禁制せしむる事

もし成敗に背くの輩においては罪科に処すべきなり。仍って状件の如し

 

字もそれほど崩れておらず、非常に読みやすい文書ではありますが、第二条(一の二つ目)の「榜示」の「示」が「尓(爾)」という当て字が使われている事、第三条の「辺」が旧字の「邊」となっている事、「背」と「輩」(ともがら)の上の部分がかなり省略されていること、「処」が「處」のくずし字であることを理解すればそれほど難しい文書でもありません。